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伝奇集 (岩波文庫)
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ユーザーによるレビュー
比類なき一壺天の数々
(2008-11-13)
◆「死とコンパス」
美しい法則性に耽溺し、自らの推理に自己陶酔する名探偵エリック・レンロットが、
その性質を利用され、レッド・シャルラッハの仕掛けた罠に落ちてしまうという、
《後期クイーン的問題》を先取りした小品。
美しく抽象的な論理操作に淫した探偵が、世界の抽象化を押し進めた
先に待っていたのは、みずからの破滅であったという皮肉な構図――。
クイーンよりも早く、軽々とこの境地に到達したボルヘスの先見性には脱帽です。
▽付記
作中に出てくる「四文字(テトラグラマトン)」とは、
「ヤハウェ(JHVH)」のこと。
ヘブライでは神の探究をする際、「ヤハウェ」は文字にする
ことが許されていないということが、本作の背景にあります。
◆「八岐の園」
生れ故郷の地方の知事だった崔奔は一冊の本と迷路を
作るため、すべてを放棄し、十三年間庵に閉じこもった。
遺されたのは、無秩序な草稿と手紙の断片のみ。
手紙には、以下のように記されていた。
「われはすべてにはあらざるも、さまざまなる未来に対し、わが八岐の園をのこす。」
時間が分岐し、平行した可能世界が無数に存在するという
本作の世界観を念頭に置き、ミステリ作家の山口雅也さんは
『13人目の探偵士』を書いたそうです。
未来を予言した本
(2007-05-10)
何度となく読み返した短編集。今までにこれだけ私に影響を
与えた小説はあったかろうか?
この小説は未来をも予見した1冊とも言えます。
「バベルの図書館」は現在Googleが行なっているミリオンズ
ブックサーチを想起させるし、「記憶の人、フネス」は
今流行の脳科学ブームの先鞭をつけた内容とも言えます。
また「バビロニアのくじ」は柄谷行人もそのアイデアを
評価しています。
短編小説としては難解な部類だと思います。
私も何度か再読して理解した短編もあります。
小説の内容を圧縮すると哲学に近づく。
そして文体は極めて詩的です。最高の小説です。
無限の迷宮
(2007-05-08)
おそらくこの作家の短編集の中では一番、密度が濃い短編集だと思います。
一つ一つの短編が非常によくできていて何度も読むとさらに理解や発見が広がり一冊だけでとても長く楽しめます。
この作家の短編集は不死や連続といった無限性がテーマになっている作品が多いです。
ひとことであらわすと迷宮といわれる所以でしょう。
翻訳が……
(2007-01-09)
原著が大傑作なのは本当。間違いなくノーベル賞クラス(とってないけど)。ただ日本語が……
誤訳も多いけど、直訳的で文章になってない部分が多すぎます。
ボルヘスは詩人だから、単語レベルでリズミカルな所があって訳すのが大変なのは分かるんですが。
『幻獣辞典』の柳瀬さん辺りが新訳してくれればいいのに。
小説のおもしろさ、読書の幸福
(2005-03-07)
〜エンターテインメント小説を読むなんて暇つぶしとしての意味しかない。何の腹の足しにもならない、人生の時間の浪費だ。
というような非常に荒んだ考え方にとりつかれてしまっていた私は、その頃数年、新書や選書、学術文庫などしか手に取らなかった。
しかし、たまたま気が向いて読んだこの本で、小説のめくるめくような面白さを思い出した。上質な愉悦の〜〜時間を過ごすことこそ人生の良質な使い方だということに気づくことができた。(齢をとったのかも知れないが。)
その後幸運にもG.マルケスやU.エーコをはじめ私を軽い酩酊感とともに素敵な異世界へと迷い込ませてくれる小説家たちに次々と出会うことができ、子供の頃感じていたような読書の楽しさが蘇ってきた。何度も読み返してみたい小説って、そうだ、あの〜〜頃もあったなあ。〜
