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おそろし 三島屋変調百物語事始
おすすめ度:
ランキング:275
価格:¥ 1,785
発売日:2008-07-30
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ユーザーによるレビュー
湘南ダディは読みました。
(2008-09-05)
繰り出される「物語」の宝、また宝と解説にありますが、本当にその通りで稀代のストーリーテラー宮部さんの面目躍如といえる作品です。本作はあちらこちらにオリジナリティのある「おそろし」さがちりばめられているだけでなく、登場人物たちの会話や地の文章にも当時のお江戸を髣髴とさせる生活感がただよっていて読者は知らず知らずに百数十年前の時間の中に引き込まれていきます。
神田三島町の袋物屋の主人伊兵衛は、兄夫婦の娘おちかをあずかっています。おちかまだ十七歳なのですが、わけあって人との交わりをすっかり閉ざしてしまい、三島屋の女中として働くことで気を紛らわしています。ある日、突然の所用で伊兵衛夫婦が出かけることになってしまい、伊兵衛を訪ねてきた碁敵の藤吉の相手をおちかがすることになります。伊兵衛がわざわざしつらえた碁打ちのための客間、黒白の間に藤吉を通すと、藤吉は問わず語りに亡くなった兄吉蔵の話をはじめるのでした。茶を入れにたったおちかが戻ってくると藤吉は顔面蒼白になり息苦しそうにしています。立てつめた障子をあけたところ庭に咲いている曼珠沙華の花陰から覗いている人の顔をみたというのです。そしておちかは吉蔵と藤吉の因縁話が語られるのですが、その後まもなく、藤吉は憑き物が落ちたように亡くなってしまいます。
おちかには人の心のなかに閉ざされた悩みをききだす力があると気付いた伊兵衛は、そのような悩みを持つ人を黒白の間にあつめてはおちかに聞かせ悩みから開放させてやろうとしてやります。そのようにすればおちかも自分の閉ざされた心を開くことが出来るようになると考えたからです。こうして百物語の形式をとって各章毎に怪異の話が語られる構成となっていますが、各話そのものが誠に精緻に組み上げられた因縁話になっているだけでなく、全体としておちかの秘密も解き明かされ救済されるという構成になっています。
作者得意の江戸がたり
(2008-08-31)
宮部みゆきの得意ジャンルの一つともいうべき江戸怪異。江戸の社会や当時の人々のものの考えをきっちり捉えたうえで組み立てられた物語はどれもよくできています。明るい面だけでなく、人の心の暗い一面にフォーカスしている点も秀逸で、現代に通じるものがあり、怪異といっても、それは人の心の中にある、ということなのだという作者のメッセージがよく伝わってきます。ただし、惜しむらくは、それぞれのエピソードをまとめる最後の物語がやや強引にまとめられたように思えること。目に見えない存在との対決、というのを描くのは難しいということなのでしょうか。
一つ一つの物語の高い完成度にくらべ人の思いが伝わらない
(2008-08-29)
宮部みゆき独特のファンタジーと奇怪さが物語を高揚させる時代小説です。
こころに傷を負ったおちかと同じような苦しみを持っているひととの対話という形で、一話ごとにすすめられていく構成は読みやすく、また、季節を感じさせる植物や、また、舞台となるお屋敷や部屋の中の空気感と様子の描写は相変わらず細微であり美しい事に感銘します。
しかし、最後には、一話一話に登場した死霊や生霊を含んだ様々な登場人物が同じ舞台に登場し、彼女を支えんと、のろわえ、意思を持った”お屋敷”という大敵に対峙するのですが、なぜ彼らをしてそこまで彼女の為にするのかというところの説得力に欠けていたり、一体その怨念の正体がなんであったのか、というところがよくわからないままに終焉を迎えるのでなんだか納得のいかないままだったという感が否めません。
また、今回も、一筋縄ではいかない人の気持ちの交錯を緻密に描写していいます。泣かせる境遇にある人物も、生き方に筋の通った好感の持てる人々が出てくるのですが、きっとあまりに登場人物が多いせいか、一人一人の思いやそれを映した行動が、いつもの宮部作品のように、読み手の心の芯まで届いてくるまえで描写が終わっている感が拭えません。
それでも、一つ一つの物語は、映写をみているようにおもしろいことにはかわりませんので、人情ものというよりは、百物語集の一部として読むと十分以上に楽しめると思いますし、宮部作品の別格の秀悦性に変わりはありません。
胸に残る、人の後悔の重さ
(2008-08-29)
心に深い傷を負って、叔父が営む三島屋で暮らすようになった主人公・おちか。
そんな彼女に、叔父は「不思議な話をしてくれる人を集めたから、
それを聞いて、おまえが私にわかりやすく話しておくれ」と命じます。
それは、一風変わった「百物語」のようなもので、
次々と不思議な話をする人がおちかの前に現れます。
その一つひとつが、重く、切なく、時に恐ろしい。
しかし、その体験を経て、おちかは悲しい体験で傷ついた人は自分だけではないこと、
見方を変えるだけで被害者や加害者は立場を変えてしまうことなどを学んで行くおちか。
次第に、おちかは自分の傷や出来事を見つめることができるようになっていく。
そのうち、お客の一人が話した話から、事態は大きく動き始め・・・。
宮部みゆきらしく、登場人物一人ひとりが丁寧に描かれており、ちょっと出てきただけの人や
侍女ですら生き生きと個性を持って動き回っています。
お客が語る不思議な話には、あっという間に読み手である私も引き込まれ、
話を聞かされているおちかの気持ちを追体験するかのような感覚が得られました。
「これはどうなっていくんだろう」という興味から、あっという間に読破してしまいました。
不幸な出来事というのは、ある日突然身の上に降りかかるもの。
本当は、ただそれを不幸な出来事として、嘆くことができればいいのでしょう。
しかし、人はそれに何かしら理由がほしい。
だから、自分のせいにしてみたり、人を恨んでみたりして、想いを残し、嘆く。
その悲しさを、いろいろな出来事を通して表現している話だと思います。
ラストは思わぬ方向に進んでいき、ちょっと私の好みとは違いましたが、
それでも一気に読ませるだけのものはありました。
ほかの時代物同様、情景が浮かんでくるような描写で、十分に楽しめるものだと思います。
でも、ラストがちょっと好みと違ったので、星4つ。
そのあたりは好みの問題ですね。
おもしろかったですよ。
静かだけど力強いストーリー
(2008-08-27)
正直、宮部みゆきさんの作品を読むのは、
これが2作品目でした。
時代小説は、初めてです。
とにかく、静かに淡々と進みながらも
しっかりとストーリーの力強さを感じました。
一人一人の人々の生きる力を感じます。
ほんのり暖かで、時にひやりと冷たく、
夏の夜の一冊には最適でしょう。
