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ユーザーによるレビュー
出色の評伝
(2008-11-16)
ノンフィクションという印象ではない。
評者は、彼を昭和39年に見ている。クロスのロングサーブからの第三球攻撃は、いまだに目に焼き付いている。
そして、世界選手権、その後の電光石火のピンポン外交、南北統一朝鮮選手団の結成などを見て、只者ではないなと感じていたものだ。
そうだったのか、だから出来たんだなと腑に落ちた。
中一で、通訳学校にかよい半年でマスターしたことたこと、低学年のときの十中で一桁の成績、納得がいった。
そして一切妥協しない強烈な個性、これははじめて聞いた話だった。(少々変わっているとの噂だった)
昭和30年代の日本卓球の黄金時代についても、多くの記載がある。
バークマン、シド、アンドレアディス,荘則棟などの名前が懐かしい。
他のいろいろについては、多くの評者と同じだから書かない。
優れたみんなに読んでもらいたい本だ。
一気読みして、人に会う度に勧める本など、そうあるものではない。これがそういう本だ。
悪いのは本の題名である。
誤った印象を植え付けられ、発行時には荻村の本が出ると聞いていたが買わなかった。
文春の今月号に、陸上の為末が“死ぬまでに読みたい本”と推薦していたから読んだような次第である。
この本を読むと、今の日本の体育界の重鎮の参考になるのではなかろうか。
中国に勝てないのも当然と思えてくる。 他の競技でも同じである。
著者はまだ42歳、綺麗な日本語だ。内容豊富、中身が濃く話題豊富しかも散漫でない。
今後の活躍を期待したい。
「拳の漂流」は今注文したところだ。
異端児ゆえのスケールの大きさ
(2008-08-19)
内容は既に皆さんが書かれている通りです。
小さな卓球場からほぼ独学で世界の頂点に登り、
引退後は世界を股にかけて指導者として活躍した荻村氏の伝記です。
おそらく漫画「ピンポン」の登場人物の造形にも影響を
与えたかと思われます。
異能ゆえの行動力と発想力が度肝を抜きますが、
卓球場の小母さんとの交流は、心を暖めます。
戦後世代を象徴する巨人の一人だと思います。
しかしこの本を読むまで、存在を知りませんでした。
この本が書かれて良かったと心から思います。
作者の前作「拳の漂流」も読み応えがありましたが、
自己の心情がややうるさく感じました。
それに比べると、大変ストレートに、かつ読ませる内容です。
すばらしいノンフィクションの書き手が登場されたことを
喜ばしく感じています。
情熱の、孤高の人
(2008-05-28)
家族皆が卓球好きなので、荻村伊智朗の名前は以前から知っていた。
また、テレビで放映されたので、彼の人生もそれなりに知っている
つもりだった。だが、こ本を読んで自分の認識不足を痛感した。彼の
卓球にかける情熱には、思っていた以上の凄まじさがある。卓球という
魔物に魅入られたのか?彼は命を削るようにして卓球に打ち込んだ。
けれど、その業績や功績とは裏腹に、彼の生き方に共感できる者は
少なかったのではないだろうか?まさに孤高の人だった。現役選手時代の
栄光、そして引退後の活躍。どれをとっても並みの人間にできるものでは
ない。小さなピンポン球で世界から国境をなくそうとした志には、頭が
下がる。ラケットと球があれば、言葉が通じなくても人はつながっていける。
この彼の信念が、ずっと受け継がれていくことを切に願う。卓球を知らない
知っているに関わらず、ぜひ多くの人に読んでもらいたい。
偶然の重なりが必然に
(2008-02-22)
はずかしながら、この人のことは知らなかった。このような人が日本にいたとは。私は、このように私とは正反対の人に憧れる。自らの信念を貫き、突っ走って倒れる。
ボリュームのある本だが、生き方の一つ一つ、また、細かな感情の変化までよく伝わってくる。著者に感謝したい。 一気に読める素晴らしい一冊。
また、表紙の何とも異様な写真、中で使用されている引退してからの写真、そして「おばさん」の写真。時の流れ、心の棘、人の優しさ。全てがバランスよくちりばめられている。
卓球、ただそれだけに一生を捧げた男「荻村」。しかし、彼は世界の「オギムラ」になっていく。
いくつもの偶然系の重なりがいつしか必然となっていく様子を感じていただきたい。
天才ゆえの不器用さと苦悩を見守った暖かな視線
(2008-02-19)
壮絶な努力によって世界チャンピオンにまで登りつめ、更に国際卓球連盟の会長としても大きな業績を残した荻村伊智朗。そんな遠い存在に思える荻村を、ごく近くから暖かなまなざしで見守った伝記です。
何事にも光の面と影の面があります。荻村のまばゆいばかりの業績を光とすれば、それと表裏一体の影は人間関係の難しさと言えましょう。荻村は超人的な努力ができてしまい、また、それが当然という視点しか持たないため、仲間から疎まれ、あるいは滑稽な行動をとることさえあります。この本は、そんな荻村という一人の男が人付き合いに苦悩し、時折人間味をみせながら一生懸命に生きていた様を、一人の女性卓球道場主の暖かな視線から見事に描いた本です。
荻村氏が書いた本を2,3読んだことがありますが、あまりに自信たっぷりの記述に苦笑してしまうところが少なからずありました。しかし、この本は彼のそういう面を記述しつつも、別の面をうまく描写しています。そのため、読後感として残ったのは苦笑ではなく、悩み努力し一生懸命生きた一人の男に対する共感と、暖かなノスタルジーのような感覚でした。卓球に興味のある人はもちろん、興味のない人も十分楽しめる作品だと思います。
