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HOME > 和書 > ヴェニスの商人の資本論 (ちくま学芸文庫)
ヴェニスの商人の資本論 (ちくま学芸文庫)
おすすめ度:
ランキング:5873
価格:¥ 998
発売日:1992-06
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ユーザーによるレビュー
ヴェニスの商人と現代の論客
(2008-01-17)
岩井克人『ヴェニスの商人の資本論』ちくま学芸文庫
まだ表題作しか読んでませんが、とっても面白く、ひじょうに勉強になりました。シェイクスピアの戯曲『ヴェニスの商人』を手がかりに、資本主義とはなにか、貨幣とはなんたるかが、とってもきれいに論じられています。ぼくはただただ唸るばかり。まったく非の打ち所がありません。あまりの美しさに、この人の手にかかれば「一休さんの資本論」だってできるだろうに、と悔し紛れに嫌味を言うことくらいしか、ぼくには思い浮かびません。
後半部に納められてる文章は題名からして難解そう。(「媒介が媒介について媒介しはじめる話」「不均衝動学とは」「個人「合理性」と社会「合理性」」「知識と経済不均衡」などなど)
専門の違う人でも表題作は楽しめると思います。
日本における脱構築的経済学の記念碑的著作
(2007-01-28)
「悪平等は不平等」という物言いがある。当今、「ワーキングプア」「格差社会」などの言葉が日本列島に氾濫しているわけだが、本当に「悪平等」は「悪いこと」なのだろうか。私には、勤労者(世帯)の困窮化や「勝ち組」「負け組」といった所得格差の拡大をみるとき、本書所収の「マクロ経済学の『蚊柱』理論」なども踏まえると、「悪平等」の方が「不平等」よりはるかにマシだと考えてしまうのだが…。
さて当書は、大きく「資本主義」「貨幣と媒介」「不均衡動学」及び「書物」の4つの諸論稿から構成されているが、F.ブローデルなども援用し、本書の表題ともなっている「ヴェニスの商人の資本論」など、資本主義を考究したエッセーのキーワードの一つが「差異」である。つまり、資本主義とは、資本の無限増殖を目的とし、利潤の絶えざる獲得を追求していく経済機構であるけれども、その利潤の源泉は「差異」である、という。
岩井教授は、利潤は時間・空間等の「差異」から生まれる、と説く。それ故、たとえば「産業資本主義とは、生産手段を独占している資本家が、労働力の価値と労働の生産物の価値とのあいだの差異を媒介して利潤を生み出す経済機構」(P.58)と措定するならば、前述した現代日本の状況は、マルクス的な意味で絶対的あるいは相対的剰余価値の創出強化、まさに初期産業資本主義段階への“回帰現象”といえなくはないだろう…。
他方、岩井教授は不均衡動学理論のイントロ的解説といえる前掲の論述の中で、特に市場原理主義派の経済学者から目の敵にされている「貨幣賃金の下方硬直性」との関連において「目から鱗が落ちる」論理も展開している。だが、これは紙幅の関係で別の機会に触れてみたい。ともあれ、経済思想に多少とも関心があるならば、脱構築的経済学の旗手といえる岩井教授のこの著作は、是非とも押さえておきたい書物の1冊であろう。
「ヴェニスの商人」は資本主義論だった?
(2007-01-13)
著者は、シェークスピアの有名な劇作である「ヴェニスの商人」の物語や登場人物を分析するうちに、なんと資本主義社会が誕生する契機をそこに見出してしまったという。「ヴェニスの商人」の登場人物をキリスト教社会・ユダヤ人社会・異邦の女性と大きく3つのグループに分類し、これらのグループ間で交換が行われる結果として、ゲマインシャフト的共同体が資本主義社会へと変質し、登場人物の存在そのものが不可逆的に変わってしまう文字通り「歴史的」な物語だという独自な解釈を繰り広げていく。このように内容は高度な資本主義論だったが、エッセイ形式で書かれていて大変読みやすかった。
興味深い初期作品集
(2005-10-23)
入試問題にも出題されたことのある有名作「ヴェニスの商人の資本論」を含む、岩井氏の経済学にかんするエッセイ集である。しかし、決して軽い内容ではなく、シェイクスピアやマルクスといった古典を援用しつつ、経済学を考えるためのツールにしているのは見事。しかし、私見ではこの本で最も着目すべきは氏が自らの業績について紹介している「不均衡動学」の項である。ハイエクやフリードマンらによる市場主義万能論に対する批判としてはスティグリッツらのアプローチ、すなわち「情報の非対称性」に着目するのがひとつのやりかたであるが、氏が発見したもうひとつのアプローチが「均衡」にかんする問題である。その留学時代の自らの論文のさわりを紹介しているこの小論こそ、本書の要であると考える。さすがに、本当に原著を読んでみようという気はしないけれども(英語だし)、「読めたらいいな」くらいの気にはさせてくれるのはスゴイと思う。
お薦め
(2003-02-23)
本書は岩井克人の雑誌連載に新たな書下ろしを加え一冊にまとめたものである。個々の議論は確かに未だ萌芽の域を脱していない。しかし、だからこそ読む者に様々なインスピレーションを与えてくれる。特に「帰ってきたマルクス」は後の岩井の代表作「貨幣論」の息吹を感じさせる。
