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HOME > 和書 > 外交〈上〉

外交〈上〉

外交〈上〉
Array/ 日本経済新聞社
おすすめ度:
ランキング:53662
価格:¥ 2,957
発売日:1996-06
通常24時間以内に発送


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外交〈上〉

ユーザーによるレビュー

外交=戦略  (2008-08-25)

本書を読んで、外交に戦略がいかに重要なものかを実感した。外交=戦略と言っても、過言ではない。
キッシンジャー氏によれば、何が自国の真の長期的な利益になるかを見極めることが、この戦略の策定に重要とのこと。しかし、過去の歴史を紐解くと、この長期的な利益のために、首尾一貫した行動をとっているリーダは、稀少であることがわかる。

内容のレベルが高く、上下2冊を読破するのに、これまで読んだ本の中で最も時間がかかったが、決して途中で止めようとは思わなかった。というのも、やはり内容が充実しているから。

歴史と外交を学ぶ最高の良書  (2008-03-25)

キッシンジャーは、『歴史は力で動く』という主張の現実主義者です。一流の現実主義者である彼の歴史論は、とてつもなく読み応えがあります。
特に、現実主義的な色合いが濃かった19世紀と20世紀の歴史の分析は本当にうならされます。

歴史は必然です。近世欧州で絶対王政の国家が生まれたのはまさしく必然でしょう。
しかし、それがドイツ(神聖ローマ帝国)ではなく、フランスだったのは必然でありません。それは、フランスの傑出した外交官がドイツをばらばらにしたからです(30年戦争)。
他にも、100年間平和を保ったウィーン体制と20年しか持たなかったヴェルサイユ体制の比較や、第二次世界大戦を回避するには英仏同盟しかなかったという分析、冷戦の経過や当事者としての裏話も必読です。

そして、もう一つアメリカの例外主義に対しての分析が素晴らしいです。
我々日本人には信じがたいですが、アメリカは善意から戦争を行っていると思っているそうです。アメリカは、アメリカ大陸では並ぶもののない帝国であり、国際政治を知らないアマちゃんだというのです。世間知らずのアマちゃんが極度の理想主義や引きこもりに走りやすいのと同じように、アメリカの外交は(相手を無視した)理想主義による外交と孤立主義の間を行き来して、そのたびに裏目に回っているという分析には凄い説得力があります。
アメリカは世界の超大国としてやるべきことはやっているが、アメリカの現実にそぐわない理想や善意がしばしば国際社会を混乱させているというのがキッシンジャーの分析です。

上巻では、17世紀の欧州からWW2までの欧州外交の歴史とそれぞれの戦略(意図)が中心に、下巻では、WW2以降のアメリカの外交が中心に書かれています。

歴史の推移への分析と共に政治哲学の書  (2007-09-23)

歴史の流れは必然である、という考えがある。
一方、歴史を作るのは人間の力である、という考え方もある。
本書では、どのような理由により歴史が動いたか、という問いに対し、それぞれの時代の客観的な状況と共に、それぞれの時代の国や人間が、どういった内在的な性格を持ち、世界をどう認識し、あるいはどう誤解し、どう行動したか/しなかったか、それにより歴史がどう動いたのか、バランスオブパワーというコンセプトのもと、緻密かつ冷徹に-数学的に-解説している。
もし、リシュリューが、ドイツの解体を図らなければ、その後のルイ14世、ナポレオンの活躍はなかったであろうし、ビスマルクが現れなければ、ドイツ帝国の統一も、両世界大戦はなかったであろうし、逆にビスマルク亡き後、過剰に強大なドイツが欧州の秩序を打倒しようと試みるのは必然だったとしている。ベルサイユ条約の出来の悪さから考えれば第二次大戦が必然であったこと、もし、ヒトラーが大西洋を支配するのを座視すれば、その後のアメリカの平和は保たれなかったであろうこと、を解説している。
しかし、マキャベリの君主論同様、冷徹な分析の裏には、極めて情熱的な主張が存在する。国際政治に責任をもつ者は、責任をもつからこそ、定義のできない正義や情緒的な道徳と戦い、科学的な判断に基き、長期的な国益を実現する政策を実行すべきだと述べている。歴史のなかで、指導者がおろかであったり臆病であった結果どのような結果を招いたか、かなり厳しく批判すると共に、責任ある指導者のどの行動がどのように国益と国際平和を守ったか分析している。
本書は、ヨーロッパ近代外交史、現代史について、歴史がどのような要因により動いたかを、突き詰めて論じると共に、それらを題材にして、国際政治に責任をもつ人間に対する哲学を論じているように思う。

個人的な感想では、上巻では、大局的に歴史を捉えて、コンセプトに基いた分析が行なわれているのに対し、下巻は自身が参加した冷戦についての現場証言の色彩が強いように思える。

本書を読むに当たり、前提として、ヨーロッパ近代史、現代史の概要を理解しておくことは必要であるように思う。そして、それぞれの歴史的事件がどのように起こり、それだどのように関連しているか、疑問をもっている人にとっては、本書はそれらに極めて明確に答えてくれるだろう。

本書を初めて手にしてから10年以上経つが、未だに時折読み返している。一生手元に置いておきたい本だ。


勢力均衡論のテキストとして  (2007-01-23)

「現実主義」(勢力均衡論)のテキストとして読むと学ぶことが結構あります。米国の外交史ではT・ルーズベルトとニクソンだけが勢力均衡を考えていたという指摘は参考になりました。たしかに今日のイラクでの泥沼も現実主義ではなく理想主義を掲げて始めてしまったと言えるでしょう。味方(ソビエト連邦)が敵に変わってしまい、敵(ドイツ・日本)を味方にするという第二次大戦のチグハグパターンを米国は繰り返しているようです。
勢力均衡論は国際関係論ではすでに古典のように扱われ多くの批判もありますが、今ユーラシアで起こっている事件はやはり米国、ロシア、中国、EU、イスラームなどのパワーのバランスを巡って展開していることが見えてきます。勢力均衡を忘れても、勢力均衡は地球を手放していないようです。

キッシンジャーによる壮大な愚痴  (2004-12-02)

正直、長くてくどい書である。そしてなによりも、下巻の途中まで、この本がどういう視点で何を語ろうとしているのかがさっぱりわからない。

キッシンジャーが語る外交史は、リシュシューに始まってビスマルク、スターリン、そしてアメリカがモンロー主義を捨て外交舞台に登場するウィルソン以降とかなり隔たった選択になっている。世界外交史としては視野が狭すぎるし、何かテーマがあってサブジェクトを選択しているかと思えばそういうことでもない。正直と惑うし、文章が長いために退屈さも伴う。

ところが、下巻も途中になってニクソン政権・・・キッシンジャーが外交を動かした時代の記述になって、初めて本書の意図が目の前に開ける。

この本は、壮大なるキッシンジャーの愚痴なのだ。
キッシンジャーのアメリカに対する愚痴、リアルポリティークが定着しないアメリカ外交への愚痴なのである。

彼によると、アメリカ外交には2つの潮流がある。国益を優先し有力国家の勢力均衡を図る現実主義としてのリアルポリティークと、世界にアメリカの理想を敷衍しようとするウィルソン的理想主義。

いや、2つの潮流とはいえない。アメリカ外交の主流はあくまでウィルソン主義であって、リアルポリティークはセオドア・ルーズベルト、ニクソンといった希少な傍流でしかない。アメリカは、理想と善意で外交を行う国なのである。

キッシンジャーは愚痴る。彼はニクソン政権の教書に、外交は現実主義的であるべきと明記したが、ヨーロッパではあたりまえのことがなぜこの国に定着しないのか、なぜいまさら教書に明記せねばならないのか、と。

なぜこの国は、リシュシューに、ビスマルクに、スターリンに、セオドア・ルーズベルトに学ばず、理想と善意で突っ走るのか。世界情勢の空気読めよアメリカ。国益は大切なんだよアメリカ。

ウィルソン以降、アメリカは自由や民主主義といった理想を世界に広めるために戦ってきた。国益の実現も皆無ではなかろうが、基本的にアメリカは理想のために外交を、戦争を行う国なのである。

アメリカ国民が巨大な軍事費負担を背負い、国益には関係なさそうな場所に兵士を送るのは、正義の国アメリカが理想を世界に広めると信じているからだ。大統領が国民の信念に背いてまで国益を追求することは難しい。

吉崎達彦氏が指摘するごとく、アメリカは青雲の志を持ったナイーブな帝国なのだ。キッシンジャーが苛立ちを持って愚痴るこのナイーブな理想主義を見失うと、アメリカ外交の本質を見誤ることになる。

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